相続税法では、親子などの扶養義務者相互間において、生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められる部分の金額については、贈与税を非課税にすることとしています。
この場合の「扶養義務者」とは、相続税法1条の2に定義規定が置かれ、「配偶者および民法第877条に規定する親族」をいうこととされています。
そして、民法では、相互に扶養義務を負うのは、直系血族と兄弟姉妹とし、それ以外であっても3親等内の親族であって家庭裁判所の審判によって扶養義務者になったものも含めることにしていますが、相続税法基本通達では、生計を一にしている3親等内の親族であれば、家庭裁判所の審判がなくても扶養義務者に含めることとしています。
これを整理しますと、生活費または教育費の贈与が非課税とされる扶養義務者とは、①配偶者、②直系血族、③兄弟姉妹、④生計を一にしている3親等内の親族、ということになります。
つまり、生計が一であることが要件となるのは、④の3親等内の親族間における贈与のみということです。
従いまして、祖父あるいは祖母が孫の学費を負担したような場合には、祖父母と孫は直系血族の関係にあるため、生計を一にしているかどうかにかかわらず、贈与税は非課税とされるわけです。
この場合には、学費の負担を受ける孫の親、つまり祖父母から見れば子が学費を負担するだけの資力を有しているかどうかは関係ありません。親に子の学費を負担するだけの十分な資力があったとしても、祖父母が負担した孫の学費に対して贈与税は課税されません。
相続税の調査等でこのような例があると、税務当局から、孫へ贈与された金額を「貸付金」として相続税の課税価格に算入することを求められることもあるといわれていますが、このような場合の立証責任は、税務当局にあり、納税者に「贈与」であることを立証する責任はありません。
ただ、問題は、「通常必要と認められる部分の金額」かどうかです。
大学の学費であれば、入学金と授業料は問題なく非課税ですが、たとえばこれとは別に入学祝金を渡しており、それが贈与税の基礎控除(110万円)を超えていれば、当然贈与税が課税されます。
生活費の贈与も同様で、贈与される側に生活するための資力があるかどうかは非課税のための要件ではありません。このため、子供に生活するための資力がある場合でも、親が負担した(贈与した)生活費は、非課税となります。
もっとも、この場合にも「通常必要と認められる部分の金額」かどうかは問題です。
子供のためにも、生活費の援助は、常識の範囲にとどめておくのが無難ともいえるでしょう。